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絵本のもつ力その③学童期と思春期

子どもは本によってどんな風に育っていくか…学童期と思春期

子どもが本を好きになり自分から本を手に取るようになるには、大人が一緒に読むにまさるものはありません。一緒に本を読むこと。それは、ただ本を楽しむだけではなく、たくさんの時間を共有することなのです。そして、会話を重ねることで、

互いの理解も深まっていきます。

 

6~10歳頃》

「読める事」と「楽しんで読める事」は違う。まだ自分で読むだけでは物語に入り込むことはまだできないので、身近な大人が読んであげる事が大事である。寝る前に昔話や民話など一つお話をする事がおきまりになって欲しい。もちろん、文字を読む事に興味が出てくる時期なので子どもにも活字が見えるようにしても、読むのはあくまで大人という事が大切である。また、この年代には、できるだけイラストが少ないものが好ましい。それは、子どもが本来持っている山ほどの想像力を働かせる事ができるからである。イラストが多いとイメージが固定されてしまう。

 

 この時期は、妖精が出てくる話や、笑いやユーモアのある話、外国の話もよい。長く残っている昔話や民話などは、新しく発見があり学ぶ事があるので、それが子ども向けに書かれているものであっても、大人にとってもよいと言える。目的や象徴のはっきりした、子どもにとってよい内容の本に出会って欲しい。そのためには、どのような本がよい本なのかということを大人が分かるようになって欲しい。他には、歴史物の本。「今」だけでなく、自分が生まれる前の「昔」が理解できるこの時期に、子どもが将来学ぶ事になるような歴史的人物の幼少の頃の話を読んでおくと、大きくなってからまた出会える。さらに、子ども向けの専門書。図鑑など動物の生態が載っているものや、環境についての本も読み始められる。

 

10歳から》

 小さい頃から親子で絵本を読み、一緒に本を手にとる機会が多いほど、自発的に本を読む子どもになる。この頃から一人で読む事が可能になり興味を持った本を自分で読み始めるようになる。

 

11歳から》

よりいっそう本に接する事が重要になる転換期。自分自身で読む技術が身についてくるので、たくさんの本に接する事でさらに技術を磨く事につながる。小さい頃から本にたくさん接してきた子どもは、自分の頭の中に多くのイメージや言葉を蓄えている。技術さえ身につければ、長い文章を読む事が苦痛にはならない。この力は、伝記や歴史物を読んで、「こんな風になりたい」と考えたり、生き方への助けや見本としたりすることに繋がる。
 

また、この時期になると、興味に個性が出てきて、自分の好きなジャンルやテーマの本を選ぶようになる。「自分の世界」を持つようになり、周りに影響されずに自分の好きな本に没頭する。本が好きで、その世界にのめり込み、現実を見なくなる事もあるので、ほったらかしにはせず、この時期にも大人が見てあげて欲しい。

さらに、親自身が読んでどう思ったのかなど本について一緒に語り合う時間を取る事で、内容についての情報を補ったり、本の書かれた背景や状況について子どもの理解を深める事ができる。成長していろいろ理解できるようになってはいるが、大人からの説明がないと分からない事もたくさんあるので、コミュニケーションをとる時間が必要である。
 

 

子どもの文学を商売にしている人達もおり、どうしても子ども達がそれに惹かれてしまう場合もある。彼らは宣伝をして流行をつくり出し、内容を置き去りにしてシリーズ化、映画化をする。子ども達が本を読み込んで自分たちの中で想像をふくらませる前に映像化されると、イメージが固定化されて想像の余地がなくなってしまう。 

様々なメディアから情報を得ることができる現代においても、自分の心の中でひとつひとつ本物の学びとして置き換えて行く力は、やはり本からしか育たない。良質な文学作品は、人にとって大切な財産である。

次号に続く・・